クラッシックロッドの楽しみ 古いバンブーロッドのチューンナップ??や
収集の楽しみなどを私達なりの意見で展開させていきます。
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 クラッシックロッドの楽しみ(もしくは苦しみ)VOL6     2000/11/27 by 長男

竿は折れるか?折れないか?そりゃー折れまっせー。
でも一度も折ったことがない方もいらっしゃいます。もちろん使わない竿は折れませんが、
私はよく折るのですこれが。折らない年が珍しいくらいなもんでして過去を振り返ると、最初に折ったのが管理釣り場で川から上がって管理小屋のドアに挟んでトップを折ったのが初体験です。その後車のドアでポキッとやって.トランクから出すときにポキッ、藪こぎしてポキッ、 バックキャストで枝に引っかけてポキッ、魚をかけてバキッ、根掛かりを煽ってバキッ、川でもんどりうってバキバキッとやって、部屋で手入れしていてマタマタポキッとやって、いったい何本のバンブーロッドを折った事か。
折れるのではなく不注意で折ってしまうのです。
折った竿のブランドが又すごい事。ペインを筆頭にレナード2回、T&T、F.E.トーマス、ペゾン数回、もう一つ思い出したのが車の屋根に載せたまま走り出してしばらく行って気が付いて戻って見つけたときに車で轢きつぶした事もありました。
なんてこったい!!ようするに私はかなりのオッチョコチョイということです。自分の不注意を自慢しても間抜けなだけですが、折れた竿は直してあげようというわけで折れたロッドの直しかたを幾つか紹介します。

折れかたにも色々ありますが裂けるような折れ方が一番楽です。6面の3、4面を残して2.3面が裂けるように折れた場合は虫ピン等で裂け目を開いて接着剤を注入し糸でしっかりバインデイングして乾燥後サンデイングし、バーニッシュするだけできれいに直ってしまう場合もあります。(写真1番上・2番目)
ちょっとひどい場合はクリアーのラッピングで仕上げてあげると安心です。

完全に枝を折るようにポッキリ折れた場合、長さを変えたくない時はグラスやグラファイトあるいは金属のパイプを使ってパイプの中で接着するとよいです。あまりトップ寄りだと金属の場合はアクションの負担になります。(写真真中)
若干短くなってもよければ折れた部分を双方とも同じ角度で鋭角に削って接着します。(写真下から2番目)
スキャーフジョイントと言うそうです。アメリカのプロには達人がいて拡大鏡でよく観察しないとわからない仕上げをします。竹の節を全て取り除いたノードレスロッドもこのような方法で接着されて仕上げられます。がこの修理方法は接着剤の強度がとても問題になります。また力の分散するトップよりも集中するミドルやバットセクションの方が難しいとおもいます。私は自分で安直な接着剤だけで修理したスキャーフ部分が簡単に剥離した経験があります。接着剤については、より強いものを

探しています。ご存知の方はぜひ教えてください。


 クラッシックロッドの楽しみ(もしくは苦しみ)VOL7     2000/12/14 by 長男

前回、折れたロッドの直しかたを簡単に紹介しました。
古いロッドを購入する場合避けられないのがブランクの曲がり(フィッシングセット)フェルールのゆるみです。
ブランクの曲がりについては
新しいロッドでも1シーズン頻繁に使用すると出てきます。ラインをロッドの真上で振れば良いのでしょうが色々な条件もありますので。一般的に右手で使用する人はラインをロッドの外側で振るケースが多いですから右側への曲がりが出やすいと思います。単純な曲がり意外に捩じれが出る場合もあります。直しかたは曲がりの出ている部分を加熱して逆方向へ戻してやればよいのですが素人が直火にかざしたりするのは禁物です。プロフェッショナルがさりげなくしていても素人がやると大失敗となりきれいな竹肌にこげ痕を作ってしまいます。塗料にも影響がでます。一番失敗しにくくて安全なのがドライヤーを使用する方法です。私は普通のドライヤーを万力で固定して使用しています。ブランクを回しながら加熱し、曲がりと逆方向へ戻します。この時曲がりの中心の位置に両手の親指を添えて少しずつ力を加えて下さい。ブランクに触って熱いと感じるくらいまで加熱したほうが効果的です。力を入れすぎて折らないようご注意ください。ちょっとコツを覚えれば簡単ですからお手持ちのロッドが一晩で全て真っ直ぐになるでしょう。
フェルールのゆるみも古いロッドにはよく見られます。フェルール自体のオスとメスのゆるみと、ブランクとフェルールのゆるみになりますが、新しいロッドの場合はすり合わせの良否が問題です。あとフェルール自体の金属の硬さも関係してくるようです。良質のフェルールはしっかり滑らかに根元まで入って抜くときはスポンと抜けます。なかなか良質のフェルールを持ったロッドとの出会いも難しいものです。キャステイングしていて何か変だと思って気がつくとガイドが逆方向をむいていたなんて経験ありませんか?!状態がひどい場合は交換するのが一番ですが、安直な方法を紹介します。
一時期この現象にメタルプライマーを塗ると良いというので使用していたことがありますが、最近はアロンアルファーを愛用 しています。ゆるみのあるオスのフェルールのゆるみの状態によって一.二滴.滴らしてテイシュ等で必要な範囲に良く伸ばします。完全に乾いてからローソクを擦り付けて挿入すると解決する場合があります。間違っても乾く前に挿入しないでください!
もう一つの方法がメスのフェルールを万力やプライヤーでほんの少し締めてやるのですが、力加減が微妙です。金属のままのプライヤーだとキズにしてしまうので私はナイロン樹脂の付いたものを使用しています。意外と簡単に直るものもあります。段巻されたかなり古いロッドの場合はブランクとフェルールの接着剤が乾燥しきってガタが出ている場合があります(50%くらい)こういった古いロッドはフェルールに脱落防止のピンが打ってありますのでフェルールが外れてしまうことはありません。隙間に液状の瞬間接着剤を浸透させて直すこともできます。フェルールをはずす場合はピンを抜いてから火であぶって木を当てた万力等で固定して抜き取って下さい。火が強すぎるとブランクがフェルールの中で燃えて炭になってしまいますので注意してください。再接着には長時間タイプのエポキシ系接着剤が良いでしょう。
このような修理や調整、簡単なラッピングや塗装ができるようになると、少しくらいコンデイションの悪いロッドも直して使用することが可能になります。ロッドの選択の幅も広がると同時に楽しみも広がりますし安価で入手したロッドを見違えるような美品に変貌させることも可能です。ぜひ身につけたいテクニックです。


 クラッシックロッドの楽しみ(もしくは苦しみ)VOL8     2001/1/22 by 長男
バンブーロッドを使い始めてからすでに20数年なりますがいまだに何故バンブーロッドに取りつかれているのか良く分かりません。最初のバンブーロッドはキラクのブランクを数千円で購入して自分で組み上げたものでした。たしか孟宗竹のブランクだったと思いますが組み立てるのがとても面白かった思い出があります。フライフィッシングという遊び自体がある意味で創造的な遊びですから私に限らずイメージを膨らませて物を作ったりするのが好きな方が多いと思います。夜中にイメージの内に居る山女魚や岩魚に思いを馳せてフライをまいたりしてイメージフィッシングに耽っているうちに山女魚がサクラ鱒に化けていつのまにかミッジフライがサーモンフライになっていたりします。一匹の魚にたどり着くまでのプロセスの長く複雑なこと、そこにこの遊びの面白さがあるようです。
フライロッドの過去を振り返ったときカーボンロッドが30年、グラスが50年位でしょうか、バンブーロッドは150年程度の歴史があります。そして今なおバンブーロッドに魅了されて深みにはまっていくフライフィッシャーがなんて多いことでしょう。

フライショップのウィンドーの片隅に遠慮がちに置かれたボロボロの赤い段まきのロッドが目に留まったときから私のクラッシックロッドの遍歴が始まりました。そのロッドは飴色の塗料もとろけてどう見ても役に立ちそうには思えない代物でしたが何か懐かしい暖かみを持って私を引き付けました。鈍いニッケルのリールシートにはF.E.Thomas,Bangor,Me,DIRIGOのスタンプがありました。店主の山城氏(つるや釣り具店)に御願いしてロッドを素振りさせてもらうと当時の私にとっては扱えそうにない、ゆったりしたアクションでした。賢明な人はそこでボロで腰の抜けたような100年も前のロッドに大枚はたくことは断念します。ところが天邪鬼な私にはどうも古く、ヤレ(時間に磨かれた)た物を好む習性があるようで、喜んで頂戴することとなりました。手に入れた一本のロッド、何やら当事の私には訳が分からないながら不思議な魅力を感じるロッドです。自分のインスピレーションを信じてロッドの素性を調べるうちにアメリカのバンブーロッドの奥深さに驚かされました、そして軟弱に思えたロッドも使い込むうちだんだん輝きを増し、気がつくと私はそのロッドの虜になっていました。見て心地よく、キャスティングして楽しく、魚をかけて面白いロッド、100年も前に釣り人の魂を虜にするロッドが作られていたのです。いや、それは時代に関係なく、好きになって、惚れてしまうロッドこそがその人の理想のロッドとなり得ると言うことでしょうか。一目惚れも大いに結構なことです。たまたま私にとっては100年前のロッドとの相性が合っただけのことです。浮気はすれどもF.E.Thomasの魅力はまだ衰えることはありません。欠点さえも魅力になってきます、とてもフェテイッシュな自分を自覚させられました。ロッドを合理性だけの道具と考える人には理解できないでしょう。私の釣りは遊びです(あたりまえ)。合理性で考えれば最新のテクノロジーで多くのノウハウを詰め込んだロッドに分がある事でしょうが、ただバンブーロッドが好きで、その質感やデザインが好きで、それだけでもバンブーロッドにのめり込む理由として十分だと思います。自分が感じるロッドを使いこなして自分の物にする喜び、たとえそのロッドが長く重くても、本人にしかわからない達成感があると思います、合理性を飛び越して自由にやった方が楽しいのであります。


 クラッシックロッドの楽しみ(もしくは苦しみ)VOL9     2001/1/25 by 長男
クラッシックロッドを手に入れてそのロッドの作られた時代や作者を調べて思いを巡らせるのは楽しいことです。フライにも有名なスタンダードフライ(クイルゴードン、ソーヤーニンフ、他多数)にはそれらのフライが完成するまでの物語があります。そしてその過程を理解することはテイペットの先端にそのフライを結ぶ時の重要な決め手にもなると同時にフライフィッシングの奥行きを広げてくれます。ロッドにも同じ事がいえると思います。多くのバンブーロッドが作られた背景には必ずそのロッドを設計した製作者の目的があるはずです。長さ、番手、アクションにさまざまな組み合わせがあります、そしてそれ等の数はとても膨大です。釣りのスタイルや釣り場の条件などによって最も適したロッドを選ぶことが大切でしょう。私は使いたいロッドに合った釣り場に出向く事もよくありますが、1900年代の初めには一部木製ロッドとバンブーロッドしかありませんでした。長さも9フィート前後が主流であった様です。当然バンブーロッドメーカーは軽く使いやすいロッドの開発を目ざして競争した事でしょう。この時代のライトラインのロングロッドには唸らされる出来栄えのものがあります。ただ古いだけにコンデイションの良いロッドが少ないのが残念ですが先日も初代エドワードの9フィートを持って管理釣り場(Y.G.L.ヤドリキ)へ行ってきました。9フィートバンブーロッドでのドライフライフィッシングも面白いものです。もともとはウェット用のロッドだと思いますがとてもしなやかで日本の開けた川で使うにはマッチしていると感じました。不思議と持ち重りのしない(と言ってもバンブ−ロッド初心者には重い)ロッドでした。長いリーチを生かしてのロングリーダー・ロングテイペットのコントロールには最適ですし夏場の忍野のように葦の伸びた季節にも有利です。私がバンブーの9フィートに慣れたせいかもしれませんがなんだかとても合理的なロッドに思えてしまいました?一緒にF.E.トーマスの7フィートと8フィート6インチも持参してテストしました。8フィート6インチの方はコンデイションが完璧と言うので取り寄せたのですが一部に軽くクラックが入っていてがっかりしたのですが、素振りした印象がとても良く、返品したら次に何時入手できるかわからないため修理する決断をしたロッドです。#4ラインがジャストフィットでしなやかで張りのある想像以上のロッドでした。現代のビルダーでもこれだけのロッドを作れるビルダーがどれだけいることか、段巻の仕上げも美しい見ても心地よいロッドです。7フィートのロッドは後期のレオン・トーマスのロッドです。こちらはかなり張りのあるドライアクションのロッドで#5ラインをスラックのないきれいなタイトループで飛行させます。このロッドが作られたのはアメリカでのドライフライ シンドロームの時代でドライフライが大流行し主流になっていった頃です同じメーカーのバンブーロッドでも制作時期におそらく50年程の隔たりがあります。同じスペシャルの名を持つ2本のろっどを比較してフライフィッシングのスタイルの流行がロッドのアクションを大きく変化させる要因であることを痛感しました。クラッシックロッドは決して時代遅れの飾りだけのものではありません。きちっとメンテナンスされたロッドは現代の物以上にその能力を発揮し、そのロッドが作られた時代へも釣り人を誘ってくれる、魅力あふれるロッドです。


 クラッシックロッドの楽しみ(もしくは苦しみ)VOL10     2001/6/13 by 長男
  ペアー・ブランディン・ロッド8‘6“#5

久々の更新になります。解禁以来、休日は釣りに出かけたり、あるいはたまってしまったボロロッドのレストアをしたりしていました。また、解禁以来ツーハンドロッドにはまってしまい、ここのところ10フィート以上の高番手のロッドが増えています。ツーハンドロッドについては別にまた紹介したいと考えています。
今回は最近入手したペアー・ブランディンの8’6”、2/2,#5のロッドについてふれたいと思います。ご存知とは思いますが彼は今のアメリカのビルダーの中でも注目されるビルダーの一人です。このロッドを譲り受けたコレクターの話では彼の制作するロッドを入手するには現在5年の時間が必要とのことです。この中に日本からの注文がどれだけあるかは不明ですが待ち焦がれている人もさぞや多いことと思います。
私の友人が今年、釣りを毎日したいがために桂川の下流部に引っ越しました。近所に漁協が経営する、半日¥1500で遊べる釣り場があるとのことでロッドの振り比べをすべく、まだラインを通していないツーハンドや主役のブランディンロッド、そして比較するロッド等、数本のロッドを持って出かけてきました。
比較ロッドとして持参したのはL&Cのヘドンロッド8’6”,3/2,#5,とセドウィック8’6”、3/2,#5です。どちらも日本ではなじみの薄いロッドですがヘドンの8’6”,2F(フェルールサイズ)#5/6はとてもパワフルでキャスティング性能の高いロッドですファーストテーパーのテイップアクションのロッドで、そのしっかりしたバットを曲げることができればラインはタイトループを作ってぶっ飛んでいきます。低番手ロッドにも優秀なロッドがあります。日本での評価がもっと高くなって良いロッドメーカーのひとつです。セドウィックについては日本では無名だとおもいます。アメリカでもレアーなロッドでまだインターネット上の市場では出会った事がありません。レナード、ペイン等に引けを取らないハイクオリテイーなロッドでミデイアムスローアクションの優美なロッドです。
ブランディンロッドはトップセクションまで中空だそうです。仕上は実にあっさりしていますがブランクの作りと共にきれいな仕上です。特筆すべきはそのフェルールの短さで、オスのフェルールの挿入する部分の長さがわずか1センチです。アクション、軽量化を考慮してのことでしょう。手に取った時その軽さにはロッドビルダーの友人が驚いていました。8’6”のバンブーロッドとなるとちょっと重い!と思うのが大方の感じではないでしょうか。
ロッドに表示してある重さが、3.49−OZです。手近にあるペインのカタログを見ると、No.197,7‘6“,3P,DF,が3 1/2to3 5/8oz,No.101,7’6”,2P,FastDF,3 1/2to3 3/4ozとなっています。ペインの7フィート6インチのロッドと同じ程度の重さです。これは十分に一日中使用できる重さといえます。
このロッドにはdfの表示があります。ドライフライアクションですのでプログレッシブなテーパーです。ロッドの感触は素振りしている状態ではちょっと硬めに感じます。ラインを通してキャスティングを始め、負荷がかかって来ると柔らかな感触に変化します。E,C,パウエル、ウィンストン、等の中空ロッドに共通の感触です。
芯のない感触とでも言ったらよいのでしょうか、いわゆるスローなアクションとは違った感触です。ロングキャストにおけるパワフル感はヘドンのほうが上のようですがテーパーも太く、重くもなります。以前ウィンストン7’6”#4とサマーズ7’6”#4/5を比較した時にも同じような感触を感じました。ロングキャストの能力についてはリールに収まったラインを全て使い切れるパワーがあれば十分です。近距離からフルラインまでストレスなく使用でき、ラインの方向性も良く、軽い、さすが名キャスターの作るロッドであるとおもいます。日本の渓流でのドライフライでの釣り上がりの釣り、トップガイドからラインを3−4メートル出しての使用にも対応できるロッドだとおもいます。
でもなんといっても広めの緩やかな流れでのマッチングザハッチでビッグサイズのレインボーを相手にするのがこのロッドにとってのベストな選択となるでしょう。私が使用してきたロッドの中でもトップクラスの性能を持ったロッドであります。


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